最初に紹介したいのは、1990年代の世界銀行がアフリカ南部で行った調査に関わる論文です。
アジアの不正汚職を目の当たりにした私が、世界中にも同様のことが起きているのではないか、何か調査報告がないかと探していた時に出会い、その後の歩みを決定づけた論文です。
タイトル:Local Capture: Evidence from a Central Government Transfer Program in Uganda(Ritva Reinikka and Jakob Svensson, 2004)
論文のキーポイントは以下
・1990年代のウガンダの政府支出のうち20%は初等教育向上に向けた支出であったが、就学率があがらないことに苦心していた。
・政府の初等教育に関わる支出のうち、特に大きいものは小学校への非賃金用財政支援(Non-wage capitation grant)であった
・世界銀行のプロジェクトチームは、PETS(Public Ecpenditure Tracking Survey)という手法を用いて、実際の計画資金が受益者たる各学校にいくら届いたかの大掛かりな調査を実施(これが世界初のPETS適用事例となる)。その結果、割り当てられた予算のうち、実際に学校に届いた額は平均して13%、ほとんどの学校は1円も受領しておらず、その資金移動の仮定で中央・地方政府の役人等による横領(Local Caputure)が発生していることが判明した。
・類似の調査はウガンダ以外の周辺国でも後に実施され、やはり近似した結果が生じていることが判明。((see Reinikka and Svensson, 2004a).)
・途上国における公的資金の横領は過去より疑いがもたれていたものの、PETSという手法により初めて量的に、第三者機関から示されたがことが重要で、各国の行政予算執行や開発援助に関わるガバナンスの重要性を世界に知らしめた調査となった。
・類似の調査はウガンダ以外の周辺国でも後に実施され、やはり近似した結果が生じている。
(FIGHTING CORRUPTION TO IMPROVE SCHOOLING:
EVIDENCE FROM A NEWSPAPER CAMPAIGN IN UGANDA
Ritva Reinikka Jakob Svensson, 2004)
・なお、ウガンダ政府は当該調査報告を受けて、後にニュースペーパーキャンペーン(助成金の存在を各家庭に知らせることで、各家庭に役人が当該資金を適切に活用しているかをモニタリングさせるキャンペーン)をうって就学率を飛躍的に向上させることに成功している。
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