私は幼いころから国際開発に関心があり、国連の理念に強い共感をもっていましたが、何をすべきか決めかねて、まずは生活の糧にと会計士資格を取得して日本で働きました。
いざ国際協力の道にと退職し、意気揚々と降り立ったバングラデシュで見たものは、テレビでみた貧困と混沌の姿だけではなく、貧困ラインといわれる毎日1ドル以下の生活をしている農村部の人達が、そもそも1ドルもいらない生活をしていて幸せそうに暮らしてる姿。国際協力という言葉を使うことなく、現地に骨を埋める覚悟でストリートチルドレンの支援を10年以上続けている日本人。現地に根を張って工場を運営し、多くの現地雇用を生んでいる日系企業と、新興国の活力。そして、海外生活も初めてで、英語もろくに話せず人に頼りっぱなしで、また収入を失ったことで自分の将来への不安ばかり募り、もはやストリートチルドレンに目もいかなくなっている自分でした。今思えばやっと国際開発に関わるスタートラインに立った時だったと思います。
その後、会計士としてのスキルと海外事業投資の可能性を頼りに、インドの地場会計事務所に勤め、日系企業の進出支援をする日々で実感したことは、新興国事業投資の管理の難しさです。法制度の複雑さと頻繁な改正、官民組織の腐敗、会計インフラの未整備などからくる会計報告と監査の質の低さ。日本の会計監査の現場では一度