官民事業資本の不正な流出(Leakage)を防ぎ、人の生活と権利、尊厳を守ること、それがAccfamの仕事です。
途上国・新興国においては、国家の成長段階にあって、官民ガバナンスの面において高い脆弱性がみられ、不正や汚職が蔓延しているといって過言ではない状況がしばしばみられます。
私はアジアを中心とした途上国・新興国における会計と監査を通じて多くの不正と汚職の現場を目の当たりにしてきました。
不正・汚職は、犯罪学上、伝統的な路上で起こる暴力的な犯罪と対比して、被害者がいない(ようにみえる)犯罪(Victimless crime)といわれますが、私が見てきた現実からはとてもそのようには言えません。不正行為者が私腹を肥やすため、不正に企業の事業資金や国の資金を抜くこと(官民資本のLeakage)により、事業がつぶれ、企業は倒産し、従業員は仕事と生活の糧を失い、国の社会福祉事業や援助、寄付資金であれば本来サービスやお金が届くはずの人に届かず困難な状況から抜け出せなくなる。そんな被害者たちを目にしてきました。
その惨状は、国籍や人種に関係なく、同じ人として、一生をかけてこの課題を解決するチャレンジをしようと決意するに十分な衝撃を私に与えました。
不正と汚職をなくすことは人類がまだ為しえていない理想です。
これだけ進歩してきた人類は、もうそろそろ不正をなくすことくらいできていいはずです。
アクファムは途上国や新興国事業に特化して不正の予防牽制・資産の回収を目的とした監査や調査を行うプロの専門家集団を作ることから始めましたが、今後もノウハウの蓄積、メソドロジーの開発強化とともに専門家の育成に努めることに加え、各国政府や国際機関に対し、英国のNational Fraud Authorityのような不正汚職をなくすための各種の施策を講じる機関設立などの政策提言を行っていきます。私が生きているうちに何を為せるかはわかりませんが、命ある限りどんなに小さな一歩でもただ進み続けること、挑戦を続けることを自分に約束し、活動してまいります。
未来のために死力を尽くした、世界中の名もなき先人達に恥じない生き方を。
八田拓三