バングラデシュにおける内部監査実施のための基本知識:第3回会計ソフトウェアと記帳言語

本シリーズでは、日系企業のバングラデシュ拠点に対する豊富な内部監査代行実績から、同国において内部監査を実施する担当者(内部監査人・監査役の方、同国に赴任されるマネジメントや本社でグローバル経営管理を行っている方、さらには外部監査人としてグループ監査の一環でバングラデシュ拠点に拠点往査を行う必要がある監査法人の方向けに有用と考えられる基本知識をご紹介いたします。

第3回は決算ソフトウェアと記帳言語について説明いたします。

目次

会計ソフトウェア

2025年4月現在、バングラデシュで使用されている会計ソフトは以下のようなものがあります。

  • 現地企業(中小・ローカル)は、Tallyまたはローカル製品(例:Southtech)を多く使用
  • 日系含む外資系企業は、QuickBooks、Xero、SAP、Oracleを採用(但しVAT、源泉徴収税、E-TIN、e-returnへの対応などバングラデシュ特有の税制に合致しているかの確認が重要
  • 小規模企業では、ExcelやAccessを使って手作業で会計処理を行っていることも多くみられます。

<留意点>

バングラデシュでは、NBR認定またはNBR仕様に対応したVATレポート機能があるかが特に重要です。ローカル企業の多くは、業務に合わせてTallyやSouthtech製品をカスタマイズして利用しています。

クラウド系ソフト(QuickBooks, Xeroなど)は国際会計基準との整合性は高いですが、VATなどローカル制度には若干のカスタマイズが必要となります。

<目的・状況別分類>

外資系・IFRS・クラウド利用が中心QuickBooks or Xero
製造業で原価管理が重要SAP B1 or PrismERP
初期費用を抑えて基本的な管理から始めたいAccord Accounts
NGOとしてドナー対応報告が必要Southtech EasyAccounts
小売・在庫連動・安価に済ませたいTallyPrime

<用途・機能別>

VAT(付加価値税)対応TallyPrime(VATモジュールあり)
🔹 PrismERP
NBR(税務当局)のe-returnフォーマットにも対応可能
在庫管理と統合SAP B1
🔹 TallyPrime
🔹 Accord Accounts
在庫・売上・原価の一体管理。製造業・小売業では必須
政府系プロジェクト報告対応Southtech EasyAccounts政府/ドナー向け財務報告の要件を満たすNGO対応モデル
クラウド利用(多拠点・海外アクセス)QuickBooks Online
🔹 Xero
🔹 ZohoBooks
海外本社との連携や出張中のアクセスに強い
部門別・プロジェクト別会計SAP B1
🔹 QuickBooks Class機能
NGOや建設業で多い、活動単位の損益追跡に対応
バングラデシュ税法への完全準拠TallyPrime(ローカル拡張)
🔹 Southtech製ソフト群
E-TIN、Withholding Tax(源泉徴収)、e-returnまでカバーできる

記帳言語

記帳言語はベンガル語又は英語での記帳が認められています。通常外国企業の現地法人は英語で記帳していますので、内部監査において仕訳が読めないというようなことにはならなりませんが、買収や出資により合弁事業を行う際などに、ローカル企業の財務数値を見る際にはベンガル語で記帳されているものを見ることもあります。また、記帳の根拠となる証憑類はBtoB取引以外はベンガル語での表記となっていることも多く、経費監査や手書きやエクセルの小口現金台帳などはベンガル語表記となっていることもあり、内部監査にあっては、日本人監査人のみでは障壁となります。

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