バングラデシュにおける内部監査実施のための基本知識:第1回会計基準

本シリーズでは、日系企業のバングラデシュ拠点に対する豊富な内部監査代行実績から、同国において内部監査を実施する担当者(内部監査人・監査役の方、同国に赴任されるマネジメントや本社でグローバル経営管理を行っている方、さらには外部監査人としてグループ監査の一環でバングラデシュ拠点に拠点往査を行う必要がある監査法人の方向けに有用と考えられる基本知識をご紹介いたします。

第1回は会計基準について説明いたします。

バングラデシュは、国際会計基準(IAS)及び国際財務報告基準(IFRS)をぼぼ全面的に採用しています。。従って内部監査にあたっては、基本的にはIFRSだと思って決算書をみてもらって大丈夫です。

より正確に言えば、バングラデシュは国際財務報告基準(IFRS)を「アドプション(adoption)」の形で導入しています。​これは、IFRSをそのまま国内基準として採用し、必要に応じて一部修正を加える方式です。​これにより、IFRSはバングラデシュ国内の法制度に組み込まれています。これらの基準は、バングラデシュ財務報告基準(BFRS)およびバングラデシュ会計基準(BAS)として知られ、上場企業や(上場企業:​ダッカ証券取引所(DSE)およびチッタゴン証券取引所(CSE)に上場している企業)や非上場企業のうち、​一定の規模や公共性を持つ企業(Public Interest Entities, PIEs)に対して適用が義務付けられています。

但し、IFRS 14:規制による遅延資産は採用していない他、金融機関:​銀行、保険会社、ノンバンク金融機関(NBFI)は、中央銀行や保険監督当局の指導により、一部IFRS9号と異なる会計処理が認められてきました。これにより例えば貸出金の貸倒引当金の計上について固定比率を用いた計上をしており、IFRSのELCモデルによる計上と比較すると大きな相違が出ていることが指摘されてていましたが、国際的な批判を受けて、金融商品の会計処理に関するIFRS 9を2027年までに完全導入する計画です。​​

非上場の中小企業(SMEs)については、​ ICAB((Institute of Chartered Accountants of Bangladesh/バングラデシュ公認会計士協会))がIFRS for SMEsに基づく「BFRS for SMEs」を2013年1月1日以降適用可能としましたが、規制当局による強制力は限定的で、多くの中小企業では以下のような簡易な会計処理や税務目的の帳簿記録に依存しているケースが多いのが実情です。

バングラデシュの中小企業の多くは、以下のような方法で会計報告を行っています:​

税務申告用の帳簿記録:​税務当局への申告を目的とした最低限の帳簿記録を行っている企業が多く、国際基準に準拠した詳細な財務諸表を作成していない場合があります。​

簡易な会計処理:​複式簿記ではなく、単式簿記や現金主義会計を採用している企業も存在し、これが資金調達や投資誘致の障壁となることがあります。​

非公式な手書き・エクセル管理:​一部の企業では、正式な会計ソフトウェアを使用せず、手書きや簡易なスプレッドシートで財務管理を行っているケースも見受けられます。

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