本シリーズでは、日系企業のバングラデシュ拠点に対する豊富な内部監査代行実績から、同国において内部監査を実施する担当者(内部監査人・監査役の方、同国に赴任されるマネジメントや本社でグローバル経営管理を行っている方、さらには外部監査人としてグループ監査の一環でバングラデシュ拠点に拠点往査を行う必要がある監査法人の方向けに有用と考えられる基本知識をご紹介いたします。
第6回はバングラデシュの監査専門家-勅許会計士についてについて説明いたします。
バングラデシュの勅許会計士(公認会計士)の人数
2024年7月現在、バングラデシュにおける公認会計士(CA)およびフェロー公認会計士(FCA)は約2000名しかおらず、うち3割の約600名が監査法人や会計事務所で実務に従事しており、7割の1,400人が企業内会計士、教育機関、政府機関、国外勤務者となっています。一方で、日本の公認会計士の数は約44000人おり、うち60%の26000人程度は会計事務所、独立開業、官公庁等に勤務し、うち36%の16000人程度が、監査法人に勤務し、残りが企業内会計士となっています。バングラデシュは全ての企業に監査が求められるため、たった600名程度が数万社の監査を実施していることになります。
バングラデシュで勅許会計士(公認会計士)になるためのプロセス
バングラデシュで CA(Chartered Accountant/勅許会計士)やFCA(Fellow Chartered Accountant) になるには、ICAB(Institute of Chartered Accountants of Bangladesh) の制度に基づいた以下のプロセスを踏む必要があります。
バングラデシュにおいて内部監査を現地の外部専門家に委託する際にはどの資格保有者が責任者となり、どのレベルの監査スタッフが何名ついており、その体制は監査目的を達成するために十分であるか、慎重な判断が求められます。
【STEP 1】入会資格:ICABに登録(CAコース入学)※大学学部など所定の要件あり
【STEP 2】Articleship(実務研修:3〜4年)
- ICA(ICAB)に登録された監査法人またはCA事務所での実務
- 通常は3年の実務トレーニングが必須(特定条件で4年)
- Articleship中に段階的にプロフェッショナル試験も受けていく
【STEP 3】CA試験(ICAB Professional Examinations)
試験は以下の3ステージに分かれ、科目数は全部で16科目(2025年時点):
🔹 1. Knowledge Level(基礎)
Accounting
Management & Financial Accounting
Quantitative Techniques
Business Communication
Business & Commercial Laws
IT & MIS
🔹 2. Application Level(応用)
Audit & Assurance
Financial Management
Taxation
Cost Accounting
Corporate Laws & Practices
Business Strategy
🔹 3. Advanced Level(上級)
Advanced Financial Reporting
Advanced Auditing & Professional Ethics
Corporate Governance & Strategic Management
Integrated Case Study
【STEP 4】ICAB規定の入会手続:入会申請+面接・倫理宣誓など
【STEP 5】FCA(Fellow CA)への昇格
登録後5年以上の実務経験:公認会計士としての独立業務または上級職
ICABのFellow認定申請:継続教育(CPD)・職歴証明書等の提出
年会費支払い・登録維持:FCAの名簿登録および更新料納付が必要
会計監査を行う場合も通常責任者としてFCAやCAが入り、その監査補助者としてArticleshipとして数名が稼働することが一般的です。