バングラデシュ中央銀行における「前政権時の金融不正・約170億ドル(約2兆タカ)流出」事件

1.    発覚の経緯・背景

決定的な告発と告知

  • 2024年10月、当時新任の中央銀行総裁 Ahsan Mansur が金融タイムズ(FT)のインタビューで、シェイク・ハシナ政権下の政商が 約1,700億ドル(Tk 2兆円強) をバングラデシュの銀行から流出させたと告発しました。
  • Mansur 総裁は、国家の情報機関(DGFI)が銀行管理者に圧力をかけ、銀行株や経営権が一部企業に「武力的に」売却されていたと述べています。さらに、S Alam グループの Mohammed Saiful Alam 氏らが 10億ドル以上を自らに融資する形で着服した可能性があるとも報告しています。
  • 不正な流出金額は $17 billion(約170億ドル、Tk 2兆円)とされ、10社以上の大手企業や政権関係者、元首相ハシナ氏の親族も調査対象に含まれています

2. 調査対応と資産回収の動き

  • フォレンジック調査の開始

2025年1月、バングラデシュ中央銀行は EY・Deloitte・KPMG の「ビッグ4」監査法人を起用し、6行を対象とした資産品質レビューと同時にフォレンジック調査を開始しました

  • 同時に、銀行金融情報局(FIU)が 11の合同調査チームを結成し、資産回収および刑事訴追支援に乗り出しています。
  • 対象となった銀行では経営陣が調査期間中に休職となり、調査の妨害が起きないように対応が進められました
  • 現時点(2025年8月)では公式調査報告書は公開されていません。
  • 資金回収の進捗と刑事訴追への展開としてIU が資産トラックと司法支援を進めていますが、具体的な回収額や告発内容は今後の発表待ちです。
  • 国際的資産追跡:マネーロンダリング防止に関し、海外(ドバイ・シンガポール・英国など)にある資産への法的手続きも視野に入れた調査が継続中です。

国の資金は国民のために使われるべきものです。この資金の流出によって苦しめられるのは、バングラデシュの国民全員であり、最も苦しむのは最底辺の生活を送っている方々なのです。大手監査法人系フォレンジック部隊がアサインされたことだけが希望ですが、独立性をもって十分なフォレンジック調査により実態解明を行い、詳細が公表され、厳格な司法判断へつながることを期待します。

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