1. 「公会計(公共支出)監査条例」
バングラデシュの2025年「公会計(公共支出)監査条例」は、批判を受けた当初案から実質的な修正がなく、結果として会計検査院(CAG:最高監査機関)が歳入の評価と徴収を監査する権限を依然として持たない形で成立しました。
2. 条例の可決と批判
2025年4月17日、ユヌス暫定政府の諮問評議会が本条例を承認し、同年5月4日に官報で公布されました。しかし、Transparency International Bangladesh(TIB)やThe Daily Star、New Ageなどが、「歳入の評価と徴収を監査対象から除外している点を強く批判していました。
2. 条文の構造
- 条例には「歳入と収入の監査」と題された章があり、CAGが歳入が適切に集金・統合されているかの形式的な監査は可能とされましたが、評価や徴収プロセスの「正確性」まで踏み込む権限は含まれません
3. 憲法との整合性
- バングラ憲法第128条4項では、CAGは他のいかなる権威の指導・統制を受けずに監査を行うと定められていますが、本条例では政府がCAGの組織編成・ルール作成・国際機関との協定などに関して「事前の同意」を必要とする仕組みが導入され、憲法上の独立性が制限されたとの指摘が上がっています 。
4. 現時点の状況
- 条例はそのまま施行されており、現在のところ歳入の評価・徴収過程を含む包括的な監査権限はCAGに付与されていません。
- TIBなどは改正を強く求めており、政府に対しCAGの完全な独立性と監査権限の回復を求めていますが、2025年6月現在、具体的な条文修正の動きは確認されていません。
CAGの歳入の評価・徴収過程を含む包的な監査権限付与は政府の透明性とアカウンタビリティーに関わる独立した機関による監視牽制体制に欠かせず、早急な対応が求められます。